HOME  ●萩原成樹の住宅に関するウンチク話●
 
「日本の住宅に一家言あり!」
パル企画社長 萩原成樹が皆様に贈る
住宅と文化に関するコラム集です
  ■ 「住まい」とは
  私は以前に鴨居という街の高台に家を持っていました。そこは、南は海、他の2面は山が見えるという大変景色の良い場所でした。私はとてもこの家が気に入っていました。中でも気に入っていたのは2階の海側に作った16畳の洋室です。外には10畳の板張りのベランダをつけました。ベランダは、西部劇に出てくるデッキをイメージしてもらうとよいでしょう。そのベランダに友人を呼んでお茶やビールを飲みながら2時間でも3時間でも時のたつのを忘れて話をしたものです。朝の海を眺めながらコーヒーを飲む、夕日を見ながら一杯飲む、遠くにフェリーも見えました。 私はこの洋室やベランダにいると、とにかく楽しい気持ちになりました。アイデアもどんどんわいてきました。仕事でつらい思いをしたときなどは、この部屋で数時間過ごしているだけで気持ちが癒されました。 その後、仕事の都合もあって鎌倉に引っ越しましたが、いまだにあの家のあの場所のことは忘れられません。 私は今「住まい」を作り皆さんに住んでいただく仕事をしていますが、原点は「あの部屋で私が感じた歓びを皆さんにも味わっていただきたい」ということです。 
  ■ 狭い土地の現実を乗り越える工夫
  「住まいとは」で私が16畳の洋室や10畳のデッキで楽しい時間を過ごしたことを書いたところ、読者の方から「そんな広い部屋を、この狭い土地で作れるわけはないじゃないか」と言われてしまいました。現実はその通りです。ただ、1件の家の中で1部屋であっても心からリラックスできる空間を工夫して作ることはできるのです。 今回は、一見よくなさそうに見える土地に工夫してリラックスできる空間を作った例をご紹介しましょう。 このホームページのトップページの絵にある七里ヶ浜シーサイドガーデンのお話をします。ここは14件のテラスハウスをつなげ小さな街のようにしました。敷地は山に囲まれた谷のようになっていて、一般の不動産屋やハウスメーカーが見たらあまり良い土地とは思わなかったでしょう。しかし、私は周囲の反対を押し切ってこの土地を取得し、不利を逆手にとってスペイン風の明るく開放的な住宅を作りました。数多い開口部も、広々としたウッドデッキも谷間のような土地だったからこそできたものです。うれしいことに、築5年たった今までに一件も出ていっていないのです。転勤になっても売らない方もいます。そればかりか、住む方がとても大切にきれいに使ってくれています。作ったときに少しだけ植えた花を住んでいる方が育てて沢山咲かせてくれました。本当に作ってよかったと思います。  最近、鎌倉で2件隣り合った家を作りました。敷地は決して大きくはありませんが、大きな洗面スペースや、ウッドデッキがあります。このホームページにも写真がありますので、ご覧下さい。とても心地よい空間ができています。 土地が狭いから、形状が悪いからといって工夫もなく住宅を作ってしまっては心地よい空間などできません。これからも難しい敷地を逆手にとって「自分が住んでみたいと思える」ような住宅を作りたいと思います。
  ■ 家の見かけ
  街を歩いていたり車から外を見ていると様々な外観の家を目にします。「これは素敵だな」と思える家もあれば、「これはちょっと」と感じてしまう家もあります。私は家の外観は住む人を連想させてしまうとても大切なものだと思います。誤解のないように言っておきますが、高級な材料を使うという意味ではありません。いくら、外国製の高級な煉瓦やタイルや玄関ドアを使っても全体的に調和のとれていない外観ではいけません。正直に申し上げると、見ていて「この家から出てきたのを人に見られたら恥ずかしい」というような変に豪華な家さえあります。まさにチンドン屋・・・いやちょっと言い過ぎました。 私は自分が「いいなあ」と思うような家を作りたいと思っていますが、万人が良いと感じるのは難しいかもしれません。「良い」と思うかどうかは、その人の年齢、思想、経験など様々な要素に左右されます。ちなみに私は年齢を重ねてからは「品のある家」ほど良く見えるようになったようです。 外観には住む人のセンスが現れます。高い材料を使わなくても調和のとれた瀟洒な家にすることはできます。やはりこれも工夫次第です。
  ■ 幻の住宅
  以前に、ある小さな山を買って南西の緩やかな斜面に複数の住宅を作ろうと計画したことがありました。といっても山を削らず地形を活かして木々を切らずに木の間に家を作るというプランです。これは住む人に多くのメリットをもたらします。まず、山を削りませんから宅地造成費がごくわずかで済みます。次に自然との共生です。計画では、山の麓に住む方の駐車場を設けました。そこからそれぞれの家まで、専用の遊歩道を作ります。自然の中を歩いて自分の家に帰るのです。しかも麓からはすべての家の遊歩道が見えますから不審者が隠れるところがなく、防犯上も安心です。アスファルト道路を作りませんからここでも費用が浮きます。私は、それぞれの家に目印になる木や花を植えて「桜の家」「桃の家」というような愛称をつけることまで考えていました。  我ながら素晴らしいできばえのこの計画、勇んでお役所に持っていきました。役所の偉い方は「君、本当に素晴らしい計画だ」と誉めてくれました。私は有頂天でした。ところが次の一言が私に冷水を浴びせました「でも許可はおりないよ」。 これが、日本の住宅行政の実態です。許可をとるためには山を真っ平らにしなければなりません。莫大な造成費のために土地は小分けにして売らないとなりません。そのままならば坪あたり10万で売れる土地が、2倍3倍の価格になります。結果的に隣同士がくっついた小さな高い家が沢山できます。もし、山を残すならば道路を通さなければなりません。1件につき2m、5件家があれば10m幅のアスファルト道路を作らなければなりません。これにも多額の費用がかかり、自然は失われます。こういう構造なのです。 山の多い日本ではそれを活かして、自然と共生する、遊び心のある楽しい住宅ができるはずです。鳥もいれば蛇もいる、こんな遊歩道を毎日通る。楽しいではありませんか。規制がもう少し緩やかになれば、と思います。
  ■ 和室の運命
  よく、住宅について話をするときに「今後和室はどうなりますか」と聞かれます。私は「なくなるでしょう」とお答えしています。そうすると皆さん意外な顔をしますが、これは決して極端なことを言っているわけではありません。今、20代や30代の人の中には正座ができない、あぐらがかけない人が大勢います。和室があっても、使いこなせないでしょう。ゴロンと横になるなら、和室でなくても洋間にカーペットをひいたり大きなソファーを置けば良いのです。老舗の料亭ですら、ただの畳ではなく掘りごたつ式に足もとを掘っている時代です。 西洋化の影響は和室だけにとどまりません。和風の家構えもなくなっていくでしょう。かつて日本人は皆、和服を着ていました。でも今は和服を着て会社に行く人はいません。機能や効率を考えると家もそうなっていくのだと思います。住宅と文化は密接に関係しています。世の中全体が便利さを求めて西洋文化を取り入れていったのですから、住宅だけ和風が残るとは考えにくいです。 ただ、私は和室が悪いと言っているわけではありません。和室だけの純和風の家も作りたいと思っています。そのために、今ではなかなか見つからない立派な古材も集めてあります。例えば煙の出る部屋にあってよく磨かれた柱などは、黒く光り、新しいものにはない風格があります。こういう材料を活用して本当の和風家作りもやってみたいですね。でも、いざ作ろうと思うと設計士も純和風建築のできる人は少ないですし、和風建築のできる職人も減っています。値段も相当高いものになります。本当に売れるかどうかは心配です。やはり、和風建築は住むものではなく見るものとするのが良いのかもしれません。 木材について  住宅の洋風化が進むにつれて、木材に求められるものも変わりつつあります。洋間では木材は壁の中に隠れているか、見えていても塗装しますので一本ものや一枚ものの意味がなくなってきています。最近では、木材のチップを集めて接着剤で固めた新しい建材が出ています。これは、プラスチックに木目を貼ったものとは違い「木」と言ってもよいものでしょう。いわば練り物の「木」です。従来ならば住宅用に使えなかった木(雑木)も使えますし、切り落として屑にしてしまった部分も使えるので林が残せて地球環境にも良いのです。おまけに、反りもきませんし強度も本来の木より強いということです。さらに、木材では難しい曲線なども簡単に作れます。和室や純和風建築が少なくなった今日では、従来の「木材」は旗色が悪そうです。近い将来このような建材が主になる時代も来るかもしれません。
 
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