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■ 建て替え物語り目次 ■
 
     
 
 
 
 「毎月12万円も家賃を払って、何も残らないなんてかなしいわ」。春田家の建て替え物語は、家計簿を見ながらつぶやいた知子夫人のこの言葉から始まった。春田家は主(あるじ)の邦雄(38歳)、知子夫人(35歳)、長男の隼人(小学校4年生)、長女まどか(幼稚園年長組)の4名である。現在は、都下の賃貸マンションに住んでいる。母の言葉を聞いた子供達も言い出した。隼人は「パパ、ボク犬が飼いたいよ」、まどかは「わたし、お庭にいっぱいお花を植えたい」と口を揃える。

 父である邦雄は「いつかはなあ」とはっきりしない。そんな邦雄にめずらしく知子夫人がきっぱりと言った。「あなたは、なんでもいつかはじゃないの。でも、何ひとつ実現しないわ」。邦雄も売り言葉に買い言葉で「家なんて、そんな金がどこにあるんだ。ウチの会社だって景気も悪いし、無理言うな」とやり返してしまった。
まどか急に泣き出した「ごめんなさい。私がわがまま言ったからね。もうピアノが欲しいなんて言わない」。隼人は黙って下を向いている。邦雄は耐えられず、雑誌を持って立ち上がった。しかし、邦雄がひとりになれる場所は、トイレしかなかった。

 数日後、邦雄が知子夫人に「なあ、あの話だけど考えてみるよ」と言った。夫人は「あの話って?」とけげんそうな表情を浮かべる。「だからさあ、家を作る話だよ」邦雄は今度ははっきり言った。邦雄の話の要点はこうだ。1.現在の家賃程度の返済で収まるならば、資金的には可能性がある、2.両親と同居すれば土地の取得代が安くすむ、3.老後を考えると家があることはプラス。知子夫人はしばらく考えて「私はお父さんお母さんと同居する覚悟は結婚したときからあったし、いつまでも隼人とまどかを同じ子供部屋というわけにもいかないし・・・」と応えた。

 2人は具体的な話をはじめた。数年前から邦雄の両親は「孫と一緒に住みたい」と言っており、その面では問題はなさそうだ。年齢も65歳前後と、建て替えに必要な体力も十分ある。やはり、問題は資金計画だ。いったい、いくらあればよいのか、月々の返済はいくらだったら可能か、だいたいいくら借りられるのか、頭金はどれだけ必要か。2人は自分たちが何一つわからないことを悟ったが、表情は明るかった。
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第2部へつづく→
 
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